出張 で 「ICHI」：座頭市とは言い辛いが傑作だと思うぞ。

という訳で先月末の水曜日に新宿バルト９で観た１本目。久しぶりに劇場で邦画を観た・・・と思ったら、9月に「おくりびと」を観たのに色々忙しくて記事にしていなかったのに気付いた。（←これはすごく面白かったよ！後日また。）私は諸々の事情で滅多に邦画は観る機会が無く、まして劇場で観るには相当の抵抗がある人種だ。更に私は主演の「綾瀬はるか」を知らなかったのだ。（爆；何かで見た事はある。）それでもこの作品を観ようと思ったのは、この写真の表情（と涙）をWEB、予告編、で観たからだ。一応断っておくけど、タイプじゃないよ。（爆；）でもこの虚ろで無表情な目、この表情と涙のカットを観て、これは観なきゃ！って、不覚にも即決しちゃったのだ。（出張日程上も丁度良かったしぃ。）結論だけ言うと、邦画の新ジャンルとまではいかないが、私は非常に面白く観る事が出来て、「おくりびと」と同様他人に鑑賞を勧められるレベルの作品だと思っている。但し純然たる座頭市ファンにはお勧めできない。私が思うにこの作品の狙いは「女版座頭市」では無い。

以下ネタバレには配慮していますが未鑑賞の方はご覧にならない事をお勧めします。

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ちなみに私にとっての座頭市は勝新太郎の1989年版「座頭市」のみ。（最近亡くなった緒形拳のカッコイイ事・・・。邦画界はまた貴重な役者を亡くしてしまった。合掌。）それ以前のモノクロ時代のは観た事無いが、観たらきっと面白いのかもしれない。でもあえて観たいとも思っていない。あと、チョット違うかもしれないが大ファンのルトガー・ハウアー主演アメリカ版座頭市「ブラインド・フューリー」。作品自体はどうでもいいような作品だが（爆；）、ルトガー・ハウアーの盲目の演技と居合斬り、ラストで魅せるショー・コスギとの一騎打ちだけは素晴らしい作品。
http://movies.yahoo.com/movie/1800140531/info

ところで座頭市の魅力って何だろう？有無を言わせない圧倒的な剣術（居合斬り）を持ちながら盲目という、普通に考えれば両立し得ないアンバランスさなのだろうか？目の見える人にとって盲目の人の苦労など想像できないと思うが、もしかしたら目の見える人以上に心眼と聴力による洞察が優れているのではないか？という、ある種の期待、憧れのような感情があるのではないだろうか？（あくまで想像ね。不謹慎な表現だったら申し訳無い。）だって、目が見えないという普通の人には絶対想像できないハンディキャップがあるのに、目が見える敵よりも強く、かつ敵見方を見分ける事なんて絶対出来そうに無いもの。「レッド・ドラゴン」の原作では「盲目の人は普通の人より聴力が良いと思われているがそうではない。より注意深く聴いているのだ」という主旨の文を読んだが、座頭市の力はそれだけじゃ実現できない。聴力以外の何かがなければ、自分に斬りかかってくる敵を斬るなんてできないよ。よってこの「ICHI」は主演に「綾瀬はるか」という「女性」を配した事で、「居合斬り」と「盲目の演技」以外に何か新しい要素があるのではないか？という想像（期待）を持って鑑賞に望んだ。既に巷の映画サイトで解説がされているので安心して書くのだが、女性であるが故の「弱さ」がこの作品の魅力ではないか？と、私も思う。途中の展開で恋愛映画になってしまうんじゃないかとヒヤヒヤしたが、幸いそうはならないので御安心。今回の座頭市は剣術において絶対的な強さを持つ達人ではなく、敵にも味方にも、自分より強い者がいるという意外性。そしてどちらもある理由により「市」を倒さない。彼女の目的は何か？・・・と思ったら大した謎じゃない。（爆；）綾瀬はるかの殺陣も大した事ない。（火爆；）・・・と言ったら失礼になるが、勝新太郎と比較する事自体が間違っているのかもしれない。勝新太郎版は、敵が斬りかかるやいなや仕込み杖から刀が舞い、敵をかいくぐりつつ斬り倒してサッと刀を杖に納める。綾瀬はるか版にはコレが無い。映像的にはカメラアングルとスローモーションで非常にカッコイイ演出なんだけど、１カットでリアルタイムで素早く立ち回る勝新太郎を期待しているとガッカリするよ。綾瀬はるか版の魅力は・・・あくまでもクールに無表情で敵を切り倒し、最後に（別カットになっちゃうんだけど）スイーっと刀を杖に納める演出かな。コレはコレでカッコイイぞ。（スタント無しらしいぞ！）そしてもう一つ、この作品の面白さは女性であるが故の悲しいストーリーなんだろうな。探し続けた目標を見失い、生きる望みも絶え果てた彼女の見えない目に映ったものは？新たな安らぎを手にしたと思った矢先、再び動乱の渦中に投げ出される運命の皮肉というか悲哀というか、胸が締め付けられるような思いを観客に残しつつも、娯楽作品として完結しているラストシーン。全体を通して非常に面白く観る事ができた。日本映画の悪い所・・・多分細かいアラはたくさんあるんだろうけど、私は全く気にならなかった。むしろ新しい日本映画としての面白さを十分満喫できたぞ。今から続編を期待している。そう言えばエンドクレジットの最後にワーナーのバナーが出たけど・・・世界配給するのかな？もしかしたら海外受けの方が良かったりして。

非常に面白かったと前置きした上で書くんだけどクレームです。（以下伏せ字につきドラック注意。明らかに私個人の勝手なクレーム=不満ですので公正な評価ではありません。）年齢制限付作品だが、年齢制限すべき映像も中途半端。特に悪役の中村獅童役の中村獅童のラストショットは不要。（全て映像見せなくても表現できる恐ろしさってあるだろう？）ところで中村獅童は一時期の岸谷五朗みたいな役だったけど、それでいいのかい？中村君？窪塚洋介は過去に色々あったらしいが劇中一番強い信念を持った男で一番カッコ良かった。あまりにも偉大な父がいるがその存在を受け入れている息子を好演している。それに引き換え大沢たかおの前半のへタレぶりは・・・私はてっきりラストでは「ダイ・ハードの黒人警官」的な活躍を見せるのかと思ったらそうではなかった。（物理的に抜けないのかと思ったよ。最後の最後で綾瀬はるかを守る為にキラリ！となると思ってたのにぃ～。）柄本明はビートたけし版で演じた親分を醸し出す親玉的な演技が良かったが、この人を見てるとコントやってる姿を思い出すので困ってしまう。ちなみに大沢たかおとは「解夏」つながりかな？（←２人とも盲目の役を演じている。）杉本哲太は・・・私はこの役は浅野忠信だと思うぞ。それとあの少年。神木隆之介君だったら100倍良かった気がするのだが・・・どうだろう？彼はもう大人になっちゃったんだろうか？

という訳で私なりの勝手な感想文でしたが、「座頭市」として見なければ非常に優れた作品だと思います。ぜひ劇場でご覧あれ！

タグ：緒形拳 居合斬り 座頭市 綾瀬はるか ICHI ルトガー・ハウアー ショー・コスギ

コメント 32

私もまだ観にいけてないんです。
Yakoha さんの「傑作だと思うぞ」はウェイトありますねぇ。
by nomame (2008-11-04 02:29) 

流石は時間を作って見ていることはある。
説明に感服いたしました。
by たいへー (2008-11-04 13:51) 

こんばんは。
＞劇場で観るには相当の抵抗がある人種だ
私もです。
なので、劇場では観ませんが、TVで放映されたら見ます。
＞「ブラインド・フューリー」
この頃のR・ハウアーは格好良かったですね。

by hash (2008-11-04 21:54) 

こんにちわ。私も何気なくICHIをみたのですが、綾瀬はるかさんの悲しげな表情がよかったです。私もこの映画は好きな一本です。
by jljlmatu (2008-11-05 00:41) 

こんばんは。
綾瀬はるかさんは綺麗でかっこよかったですね～
あのガラス玉のような何も映していない目が凄いなあと思って観ていました。
ラストシーンのちょっと強くなったような表情が好きです☆
by non_0101 (2008-11-05 01:07) 

つまるところ、綾瀬はるかさんのファンが一人増えた、
ということでしょうか？・・・違う？

by ランランラン太郎 (2008-11-05 09:25) 

こんにちは。
この綾瀬はるかの写真は何度かネットで見ていたのですが、こういうストーリーとは知りませんでした。
興味が湧きましたわ。

ところで、ルトガー･ハウアーの『ブラインド・フューリー』！
私も観ました！　あれ、面白いですよね。
冒頭のカンボジア（でしたっけ？）での特訓？！シーンから、心をわしづかみにされました。
Yakoha さん絶賛のラスト･シーンは確かにすごかったです。
by びっけ (2008-11-05 20:07) 

これを観ようと思いつつ、旦那に付き合って『ハンサム☆スーツ』
観てきました。
綾瀬はるか・・・うちの旦那は好みですよ(^m^ )クスッ
by 真凛 (2008-11-06 19:56) 

是非観たいなあと思っている映画ですが、私は殺陣に期待しています。それが期待出来ないとなれば、迷いますね。
by たいちさん (2008-11-07 14:07) 

綾瀬はるかちゃんのドラマはよく観てます。
この映画で主演してたんですね。それは知らなかったですけど…
今までと違う彼女の魅力が出てそうな感じですね。


by はまちゃん (2008-11-11 23:46) 

> nyan さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:17) 

> nomame さん、御来訪ありがとうございます。
　「傑作」は、ちょっと言いすぎだったかなぁ・・・？（笑；）
　でもぜひご覧下さい！

by Yakoha (2008-11-12 00:18) 

> たいへー さん、御来訪ありがとうございます。
　いや、あの～、どの辺に感服いただいたのかわからないのですが、そう言って戴くと本当に嬉しいです。好き勝手言ってるだけなんですけどね・・・。
by Yakoha (2008-11-12 00:22) 

> かつぽん さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:23) 

> cocoa051 さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:23) 

> yas さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:23) 

> hash さん、御来訪ありがとうございます。
邦画は・・・対費用効果というか、リスクマネジメント的に危険というか（爆；）・・・やっぱり危険を感じてしまいます。（笑；）最近のルトガー・ハウアーは悪役が多くてちょっと残念ですねー。太ったし。（笑；）
by Yakoha (2008-11-12 00:25) 

> jljlmatu さん、御来訪ありがとうございます。
　よかったー！同じ感想を持ってくださる方がいらして嬉しいです。でも・・・傑作というのはチョット言い過ぎだったかもしれません。（笑；）すごく面白かったんですけどね。
by Yakoha (2008-11-12 00:27) 

> みっきーを さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:27) 

> non_0101 さん、御来訪ありがとうございます。
　ラストシーンの爽快さ？は気持ちよかったです。もし続編があれば・・・ここからスタートかな？って思っています。
by Yakoha (2008-11-12 00:28) 

> 功太郎 さん、御来訪ありがとうございます。

by Yakoha (2008-11-12 00:28) 

> ランランラン太郎 さん、御来訪ありがとうございます。
　未だに彼女のファンって程じゃ・・・
　それでは0.5人ほどファンが増えたという事に
　しておきましょう。（苦笑；）
by Yakoha (2008-11-12 00:29) 

> ZE-TA さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:30) 

> びっけ さん、御来訪ありがとうございます。
　ぜひ劇場でご覧下さい！私はとても面白かったです。
　ルトガー・ハウアー・・・今は何してるんでしょうね？（笑；）
　せっかくだから「ブラインド・フューリー２」とか作ればいいのに、
　って思っています。
by Yakoha (2008-11-12 00:32) 

> kurumi さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:32) 

> Akkey さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:32) 

> 真凛 さん、御来訪ありがとうございます。
　ハンサム☆スーツ・・・私も実はチョット興味あります。（笑；）
　綾瀬はるかさんは・・・ノーコメント。（爆；）
by Yakoha (2008-11-12 00:34) 

> miopapa さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:34) 

> たいちさん さん、御来訪ありがとうございます。
　殺陣、悪くはないんですよ。比較対象を勝新にするとどうしても見劣りはしますけど、いい感じで観れました。こういう新しい時代劇も悪くないと思いましたよ。
by Yakoha (2008-11-12 00:36) 

> duke さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:36) 

> noric さん、御来訪ありがとうございます。
by Yakoha (2008-11-12 00:36) 

> はまちゃん さん、御来訪ありがとうございます。
　おお・・・テレビドラマはあまり観ないので全く不明。私が観るのは・・・「渡り世間は鬼ばかり」を仕方なく。妻にチャンネル権を取られて・・・（半分嘘です；笑：）
by Yakoha (2008-11-12 00:38)